先週の木曜日にチョリソーを買ってきた時点では、一切、こういうシチュエーションは想定していなかったんだが……昨日、日本がチュニジアに大勝。4得点は日本のワールドカップ史上の最多得点だそうだ。しかし、わからんもんだな。特にオーラを発している選手も見当たらないってのに。元オランダ代表のファン・デル・ファールトが言ったという「(日本選手は)みんな同じように見える」という〝失言〟はおれも同意するところ。カズや中田や本田という強烈な個性を有するカリスマもいない、合宿を抜け出して女といちゃついているような不届きものもいない(あの「急にボールがきたので」という〝名言〟を発した人です)、そんなコンプライアンスにも適った〝優等生チーム〟に物足りなさを感じるサッカーファンは少なくないと思うんだが……でも、4点だから。これは、もう、黙るしかないね。とにかく、日本は勝った。だったら、今夜はパーティーだろう……ということで、木曜日に買ってきたチョリソーでチリコンカーンを作ろうと思い立った。いや、正確に言えば、チリコンカーンのカーン(はスペイン語で「肉」の意)をチョリソーに置き換えた、言うならばチリコンチョリソー。そういうものを作ってみようかなと。で、なんでチリコンチョリソーなのかについては後述するとして……大事なのは、ビールだよ。ここは、やっぱり、メキシコビールだろう。食べるのがメキシコ料理のチリコンカーンをアレンジしたチリコンチョリソーだし、日本―チュニジア戦が行われたのがメキシコ第三の都市モンテレイだし。もうね、メキシコビール以外には考えられんでしょう。これは、なんちゃってドイツ料理であるジャーマンポテトをドイツビールのエッティンガーで味わったのと同じリクツ。幸いなことに、エッティンガーを買ったやまやではメキシコビールも扱っているのだ。やまやのHPで確認したところ、扱っていのはテカテ、コロナ・エキストラ、モデロ・エスペシアルの3種。この内、チリに合いそうなのはテカテかなと。商品説明によれば「ほのかな酸味とフルーティなアロマが感じられ、スパイシーな料理にもよく合うメキシコ産ビールです」。だから、チリにはお誂え向きだろうと。
で、またぞろやまや中川原店まで足を運んで輸入ビールのコーナーを見て回るも、最初は見つからず。え、売り切れ? しかし、持ち前の粘りを発揮して(?)よーく目を凝らすと……輸入ビールのコーナーのいちばん下の棚のいちばん左端に、ありました、1本だけ。さらに、その1本を取り出すと、奥にはなぜかモデロ・エスペシアルがこれも1本だけ。なに? この、人目を避けるような陳列の仕方は……。ともあれ、せっかくだから、このモデロ・エスペシアルも買うことにして、2本でおいくらかというと……550円。安い! いやー、やまやは庶民の味方だわ(最敬礼)。
ということで、せっかくだからそれぞれを単独で激写した写真を貼っておきましょう。もしかしたら、こういうのを本当の記念写真と言うのかもな。

さて、この2本を持参の買い物袋(母のお手製)に入れて、やまや中川原店からもほど近いアルビス高原町店に移動。ここで仕入れたのは、次の品々。
兵庫県産のレッドオニオン 128円
はごろもフーズのミックスビーンズ 158円
CGCジャパンの完熟カットトマト 118円
SB食品のチリパウダー 258円
モノとしてのサイズで言えばいちばん小さいチリパウダーがいちばん高いわけだが……まあ、他の3品は使い切りだからね。それを思えば、チリパウダーが特別高いわけではない? そもそも、258円だし。年金生活者の金銭感覚はどうにもみみっちくてイカン……。
ともあれ、こうして夜のパーティーに必要なものはすべて揃ったわけだが……ここで、そもそもおれがチリコンカーン改めチリコンチョリソーなる風変わりな料理を作ろうと思い立ったワケを明かすことにしよう。きっかけは、またしても東出昌大の動画だ。東出昌大がこちらの動画で「チョリソーとニンニクの野郎パスタ」というのを披露していて、先週の木曜日にチョリソーを買ってきた時点ではこれをそっくり真似するつもりだった。ただ、そのつもりで動画を見直したところ、どうにも違和感が拭えない。東出昌大が料理に投入したチョリソーというのは自分(たち)で獲った鹿や猪の肉を専門の業者に加工してもらったもので、この動画では明言していないんだが、「自己流ジャーマンポテトで盛り上がる法」で紹介したこちらの動画では「唐辛子とハーブが入っている」。そうなると、そのチョリソーはスペインで生まれたチョリソーが中南米に持ち込まれて各地に普及する過程で独自進化を遂げた、言うならばなんちゃってチョリソーということになる。というのも、原産国であるスペインではチョリソーには唐辛子は入れないそうなんだよ。で、それが本来のチョリソーだとするならば、唐辛子入りのチョリソーはなんちゃってチョリソーと言うしかない。ついでに言えば、日本でチョリソーなる名で流通しているものもほとんどは南米流のなんちゃってチョリソーらしい。でもって、ウィキペディアでは「チョリソの商品名で市販されているソーセージの一部には、本来のチョリソとはまったく異なる、単に辛い味付けのウィンナー・ソーセージもあるため注意が必要である」。実は、おれが先週の木曜日に買ってきた米久の「超あらびき辛旨チョリソー」も「焙煎唐辛子(直火の釜で焙煎した唐辛子)で、風味豊かな後引く辛さに仕上げた、大人のためのチョリソーです」。で、東出昌大がチョリソーと称しているものもそんな南米流のなんちゃってチョリソーということになるわけなんだが……それとイタリアの国民食であるパスタと合せるというのがね。おれには、アイデアとしてスグレテイルとは思えない。それよりも、チョリソーでチリを作ってみたらどうだ? と。チリの原産国をめぐっては、ネット上には「実はアメリカ生まれ」とする〝事情通〟の解説も散見されるのだが、七面倒臭い歴史の話はどうでもいい、ここはシンプルに誰もが納得する〝証言〟として、この人物にご登場願おう。その人物とは、ロサンゼルス市警察殺人課のコロンボ警部補(吹き替え等では「警部」となっているものの、lieutenantなので「警部補」です。要するに、古畑任三郎と同じ)。日本でもおなじみのこの名刑事の大好物がチリ。これはウィキペディアにも書かれている。そんな人物の〝証言〟なんだから説得力があると思うんだが……ここは二見書房版『刑事コロンボ』(なお、参考情報として書いておくなら、この二見書房版『刑事コロンボ』は日本で独自にノベライゼーションされたもので、本国アメリカでは出版されていない。だから、翻訳されたものではない。ところが、どういうわけか書誌上は飯島永昭訳となっている。でも、翻訳しようにも原書がないんだから。こういうのは、ちょっとした詐欺だと思うぞ。ちなみに、このシリーズは小鷹信光も何作か担当しているんだが、ウィキペディアの小鷹さんのページではこれらの作品は「翻訳」ではなく「ノベライゼーション」として記載されており、小鷹さんに〝私淑〟するおれとしては、一言しておこうかなと)の第21巻「逆転の構図」(ドラマだと第27話)よりこんな一節を紹介しよう――
俗に〝メキシコ・タウン〟と呼ばれるオルペラ・ストリートに、コロンボがひいきにしている〝バーニーの店〟というスナックがある。あまりみてくれのよくないドアを押して入ると、右手にカウンターがあり、その奥がオープン式の調理場、左手にはテーブルが五つ六つ、その向うにはビリヤード台が二つ置いてある。
コロンボは六時過ぎからガレスコ邸の家政婦のモイラン夫人と、この〝バーニーの店〟のテーブルで向かいあっていた。コロンボはチリを、そして、モイラン夫人は生牡蠣をつつきながら、ビールをやっている。
モイラン夫人がポール・ガレスコ邸での家事を終えて出てきたところを、「モイランさん、あたしの行きつけの店で、チリでもつきあっていただけませんか? ぜひともあなたにうかがいたいことがあるんです」とコロンボが誘うと、モイラン夫人ははじめ顔をしかめた。
「チリ……⁉ なんですの、それ?」
「いや、肉と玉ねぎとうずら豆、それを胡椒で煮こんだ辛いメキシコ料理ですよ。あたしの大好物でしてね」
「わたし、辛い物はだめなの。それにきょうは疲れているから失礼します」
「じゃ、ビールでもいかがですか? 生牡蠣でもつまみにして。牡蠣のハーフ・シェルもその店の売り物なんですよ」
この作戦は図にあたった。モイランはロサンゼルス名物の一つである生牡蠣に目がないらしかった。コロンボはやっとのことでモイラン夫人を〝バーニーの店〟まで連れてきたのだった。二人がドアを入ったとたん、主人のバーニーが大声で、
「いらっしゃい、警部。カウンターでしょ? あいてますよ、どうぞ」
「いや、きょうはちがうんだ。ちょっとその……」
「おや、お連れさんですか、警部。こりゃまたお珍しい……」
ようやくモイランを認めたバーニーは、あっけにとられて一瞬だまりこんだ。しかし二人が奥のテーブルについたのを見とどけると、注文も聞かずにコックにどなった。
「はい、コロンボ警部のテーブルにチリを二人前!」
「いや、ちがうよ、バーニー! 勝手にきめちゃ困るな。あたしはチリだけど、ご婦人は生牡蠣だよ。新鮮なやつをハーフ・シェルでたのむ!」コロンボは珍しくせきこんで叫んだ。
モイランははじめいつもの仏頂面をしていたが、そんなやりとりを聞いているうちに、表情がしだいにやわらかくなってきた。
(この警部さん、いつもカウンターに一人ですわって、安いチリをつつくらしいわ。気の毒に、きょうはわたしのために大散財ってところね。そういえばいつもボロを着ているし、ひょっとして奥さんいないんじゃないかしら……)
朝鮮戦争で夫をなくしてから二十三年未亡人をとおしてきたモイランは、まじめ一方な性格と地味な生活から、かたくなな女性になっていた。しかしコロンボや〝バーニーの店〟の飾り気のない雰囲気に接していると、彼女の心も急速にほぐれはじめた。二、三十分もするとビールの酔いも手伝ったのか、彼女は身の上話まで聞かせるようになった。
コロンボはジョッキには手をふれずに、チリをつつきながら、もっぱら聞き役にまわっていた。
なかなか上手なノベライゼーションだと思うな。ちゃんと小説になっているから。ま、おれごときが言うのもなんだけど……。ともあれ、コロンボはハッキリと言ってるわけですよ、チリはメキシコ料理だと。だから、チリは(アメリカ人の意識においては)メキシコ料理なんですよ。こうなると、唐辛子がふんだんに使われた南米流なんちゃってチョリソーで作る創作料理(?)のベースとしてふさわしいのは①パスタ②チリ――のどっちか? もう答は明々白々でしょう。
ということで、チリコンカーンのカーンをチョリソーに置き換えたチリコンチョリソーを作る――というアイデアが浮かんだのが先週の土曜日のこと。でもって、買ってある「超あらびき辛旨チョリソー」の賞味期限(6月26日)も検討した上で、今週中には……という腹積もりではいたんだけれど、日曜日の日本の大勝で、だったら今日だ! と。これが、コトの経緯であります。
で、でき上がったのが↓。ヴィジュアル的には、1か月前に作った「夏野菜たっぷり トマト煮込み」とさしたる違いはないんだが……味は、全然違う。なにしろ、チリパウダーをこれでもかと振ってるのでね。実は副菜には湖池屋のカラムーチョを選んだんだが(まあ、トルティーヤの代りです)、あのカラムーチョが甘ったるいと感じるくらい! それくらい、チリチリしている。これだったら、「超あらびき辛旨チョリソー」も生きるってもんでしょう。

ということで、東出昌大の動画に着想を得た料理シリーズが計3本となったわけだけれど、ひとまずこれでこのシリーズは打ち止め。やっぱりねえ、それなりにカネがかかるんだわ。普段、発泡酒を呑んでいる男が、いくら安いとは言え、輸入ビールを1晩に2本も空けたんじゃなあ……。
かくて、パーティーは終わった。今日からはまた年金生活者の慎ましい生活に、戻る。